『有罪、とAIは告げた』が多分言いたかったこととは

 2026年3月末にNHKBSで放送された特集ドラマ『有罪、とAIは告げた』(脚本:浅野妙子)の原作は,SF法廷小説である中山七里『有罪、とAIは告げた』(講談社,2025年)である。原作は未読。

 伝説的な裁判官を祖母に持つ若手の裁判官である高遠寺円(芳根京子)は,同僚の裁判官(臼田あさ美)とともに裁判所に試験的に導入された生成AI「法神」の検証を任される。過去の裁判記録を入力し,裁判官の思考をなぞる「法神」は,新しい事案についてあっという間に判決文を作成するが,裁判官が書き上げたものと同じだった。

 高遠寺は18歳の少年が父親を刺殺した事件を担当することになった。この事件の証拠書類や鑑定書を読み込み,過去の類似判例を調べた「法神」は,裁判長の檜葉(國村隼)と同じ判決を出力した。しかし,高遠寺は「法神」に疑問を持つ。

 予想される通り,裁判でAIに判断させてはいけないという主張である。なぜかといえば,AIに独自の判断力はなく,入力された過去の記録だけでなく,裁判官の思考傾向を模倣した判決を下すためだという。

 ただ,ドラマ自体は,視聴者なら最初に気づくように,この被告が真犯人ではなかったといった方向で終わる。わかりやすさを優先したためだろうが,昔のSFに出てくるようなAIの外観や,記録を一枚一枚ハンディスキャナーで読み込ませる裁判官など,細部の現実味が薄い。さらに,裁判員の中年男どもがステレオタイプな発言をするなど,底の浅さも気になった。

 AI,死刑制度の是非,定年の近い裁判官の思い入れ,誤認逮捕が入り混じっており,臼田あさ美だけでよいのに,無理に芳根京子を加えたように見える。

 裁判記録は電子化され,裁判業務へのAI導入も進んでいるのだろうが,大学のレポート課題のように判決文を作文させるようにはならないことは明白である。ただ,三審制の下では,それぞれの裁判所で電子記録を持ち,異なるAIシステムを使うのかなど別の課題もありそうだ。