安青錦関は特別

 大相撲11月場所で優勝した安青錦関が大関に推挙され,伝達式では「大関の名に恥じぬようまたさらに上を目指して精進致します」と口上を述べた。これまでのような,「不惜身命」,「気魄一閃」などという聞いたことのない四字熟語を含めず,自分で理解できることばにしたかったそうで,結構なことだった。これまでは四字熟語を押し付ける存在が背後にいたに違いない。

 安青錦関には,いくつか特別な点がある。ウクライナのヴィンニツャの出身,本名は,ダニーロ・ヤブグシシン。ロシアがウクライナに侵攻した直後に出国し,日本にたどり着いた。安青錦関の存在が母国にどれほど伝わっているのかわからない。しかし,ウクライナ人にとっては,うれしいことであるのは間違いない。もう一人のウクライナ出身の獅司関とは2回対戦し1勝1敗,一方,ロシア出身の狼雅関とは対戦していない。獅司関も狼雅関との取り組みはないので,取組編成会議が配慮しているのだろう。

 11月場所の話題は,大の里関の連続優勝,豊昇龍関の初優勝,それに安青錦関の大関昇進が成るかどうかだった。ところが序盤に豊昇龍関が2敗し,終盤に大の里関が急に不調をきたして,隆の勝関戦では,足がついていかなくなり,安青錦関戦でも同様で,微妙な勝ち星となった。そこで,豊昇龍関が圧倒的に有利になったが,安青錦関が,優勝決定戦で豊昇龍関を破って優勝し,大関昇進を確実にした。11勝でも,あるいは琴櫻関に勝つなら,大関になってもよいという意見があったが,それ以上の成績を残した。安治川部屋に入ったことといい,今までのところ,強運を感じる。

 安青錦関の名を知ったのは,今年の1月場所からである。その相撲の内容はかなりスリリングであった。身長も体重も平均以下であるが,足腰が抜群に強く,なかなか土俵を割らず,「首投げ」や「内無双」といった技を繰り出す。過去の取組のDVDを見るなど相撲を研究するのが好きで,いつも安治川親方と相撲の話をしているらしい。きわめて真面目ということを含め,他の日本人力士とは異なる側面があるようにみえる。